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釧路地方裁判所 昭和50年(わ)59号 判決

本籍

帯広市西六条南一六丁目一一番地

住居

右同

医師

谷藤二郎

大正一一年四月二五日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官中山博善、弁護人福岡定吉出席のうえ審理をし次のとおり判決する。

主文

1  被告人を懲役四月および罰金五〇〇万円に処する。

2  右罰金を完納できないときは金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

3  被告人に対し本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

4  訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、帯広市西六条南一六丁目一一番地において、産婦人科病院を経営しているものであるが、自已の所得税を免れようと企て、人工姙娠中絶、分娩、時間外診療による収入の一部を除外して架空名義の簿外の普通預金を設定する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和四六年分の実際課税総所得が一、九一一万二、五一〇円あつたにもかかわらず、昭和四七年三月一五日、帯広市西五条南六丁目所在の所轄帯広税務署において、同税務署長に対し、同年分の課税総所得金額が七六九万三、五九八円でこれに対する所得税額が一七六万五、六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、同年分の正規の所得税額七七五万九、九〇〇円と右申告税額との差額五九九万四、三〇〇円を法定の納付期限までに納付せず、もつて不正の行為により同額の所得税を逋脱し

第二  昭和四七年分の実際課税総所得が二、二九七万八、〇一三円あつたにもかかわらず、昭和四八年三月一五日、前記帯広税務署において、同税務署長に対し、同年分の課税総所得金額が八三三万六、六二七円で、これに対する所得税額が一九七万八、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、同年分の正規の所得税額九八三万九、五〇〇円と右申告税額との差額七八六万八〇〇円を法定の納付期限までに納付せず、もつて不正の行為により同額の所得税を逋脱し

第三  昭和四八年分の実際課税総所得金額が二、九五二万一、八九二円あつたにもかかわらず、昭和四九年三月一五日、前記帯広税務署において、同税務署長に対し、同年分の課税総所得金額が一、二三八万八、〇九一円で、これに対する所得税額が三八一万一、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、同年分の正規の所得税額一、三五四万四、五〇〇円と右申告税額との差額九七三万三、四〇〇円を法定の納付期限までに納付せず、もつて不正の行為により同額の所得税を逋脱したものである。(なお、右各所得の内容は別表一ないし三の各修正損益計算書のとおりであり、各逋脱税額の計算は別表四ないし六の逋脱税額計算書のとおりである。)

(証拠の標目) (かつこ内は立証事項。漢数字は別表の各修正損益計算書の番号を、同アラビア数字はその各修正損益計算書中の勘定科目の番号を示す。)

一  被告人の当公判廷における供述(全般につき)

一  被告人の検察官に対する供述調書二通(右同)

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書八通(右同)

一  西山京子の検察官に対する供述調書二通(右同)

一  佐々木原慶子および原勲の大蔵事務官に対する各質問てん末書(右同)

一  小林政幸の大蔵事務官に対する質問てん末書および検察官に対する供述調書(右同)

一  相沢徳到の大蔵事務官に対する質問てん末書二通および検察官に対する供述調書(右同)

一  押収してある左記証拠物(いずれも昭和五〇年押第二七号で頭書番号はその枝番を示す。(右同)

1、3、5の総勘定元帳三綴、2、4、6の所得税確定申告書三枚

一  大蔵事務官笠井寿一他五名作成の調査事績報告書(一の1、3ないし6、二の1、3ないし5、三の1、3ないし7)

一  大蔵事務官佐々木弘樹他五名作成の調査事績報告書(一の1、4、二、三の各1)

一  大蔵事務官清水修作成の左記作成年月日付の調査事績報告書昭和四九年一二月一七日付三枚綴り(一、二の各1)、同日付二枚綴り(一の4)、昭和五〇年二月三日付(一ないし三の各1)、同年一月二〇日付(二、三の各1)、同年二月三日付(一ないし三の各1)、同年一月一八日付(一ないし三の各2)

一  大蔵事務官松本修作成の左記作成年月日付の調査事績報告書昭和五〇年一月二〇付(一ないし三の1)

同年一月一八日付(一ないし三の1)、同年二月一八日付(一の7、二の6、三の8、9)

一  大蔵事務官中山登他一名作成の調査事績報告書(一ないし三の各1)

一  大蔵事務官笹岸昭司他一名作成の調査事績報告書(一、三の各1)

一  大蔵事務官笠井寿一他四名作成の調査事績報告書(一ないし三の各1)

一  大蔵事務官野口秀一作成の調査事績報告書(一の8ないし10、二の7ないし9、三の10、11)

一  次の者の大蔵事務官に対する質問てん末書

住吉勇蔵(一、二の各1)、西山京子(二の1)、伊藤美恵子(三の1)、荒木サヨ子(三の1)、小里護(一、二の各1)伊藤記美子の昭和四九年一二月二日付(一の6、二の5、三の7)同人の昭和五〇年二月二七日付(二の1)

一  帯広税務署長作成の報告書謄本(一の8、9、二の7、8、三の10、11)

一  次の者の大蔵事務官に対する答申書

瀬戸一与(一ないし三の各1)、佐藤実(一、二の各1)、石田一(二の1)、千葉正義(二の6、三の8)

一  次の者の作成の回答書

渡辺幹男(一の1、4、二の1)、帯広郵便局長(一、二の各1)、住友生命保険相互会社釧路支社帯広分室長(一ないし三の1)

一  次の者の作成の証明書

橘武雄(一ないし三の各1)、綿徳彦(一ないし三の各1)、有田義雄(一ないし三の各1)青山佼市(一の1)

一  押収してある左記の普通預金通帳(いずれも昭和五〇年押第二七号でアラビア数字番号はその枝番を示す。)

7ないし10(一の1ないし6)、11(一の1ないし6、二の1ないし5)、12ないし14(二の1ないし5)、15(二の1ないし5、三の1ないし7)、16ないし20(三の1ないし7)

一  押収してある保険料領収帳一七冊(昭和五〇年押第二七号符号21ないし37)(二の1)

一  押収してある念書一通(同号符号38)(三の1)

一  押収してある領収書七通(同号符号39ないし45)(三の1)

一  押収してある青色申告書類つづり一綴(同号符号46)(一の8ないし11、二の7ないし9、三の10、11)

(法令の適用)

1  判示各所為につきいずれも所得税法二三八条一項(いずれも懲役刑および罰金刑を併科)

2  併合罪につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項(懲役刑につき判示第三の罪の刑に加重)

3  労役場留置につき同法一八条

4  懲役刑の執行猶予につき同法二五条一項

5  訴訟費用の負担につき刑訴法一八一条一項本文

(量刑の事情)

被告人は三年間にわたり合計二、三五八万余円にのぼる金額の税額を逋脱し、申告率も約四〇%で犯行の態様も計画的であり、その犯行の動機もくむべき事情がなく、犯情は悪質であるといわざるをえない。しかし、犯行後、正規の納税額を納め、重加算税等も納付しており、現在充分反省していることを斟酌して主文の量刑を相当と認めた。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 遠藤賢治)

別表 一

修正損益計算書 昭和46年

〈省略〉

〈省略〉

別表 二

修正損益計算書 昭和47年

〈省略〉

〈省略〉

別表 三

修正損益計算書 昭和48年

〈省略〉

〈省略〉

別表四

〈省略〉

別表 五

〈省略〉

別表 六

〈省略〉

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